月曜日までに考えておきます

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"「学力」の経済学"は特に子育て世帯におすすめな良書だった

"「学力」の経済学"という本、本屋で見て帯に書いてある内容が面白そうだったので読みたいと思ってました。 図書館で予約したんですが100人待ちとかで、ちょうどKindleで20%ポイント還元をやっていたのもあるので買ってみました。

「学力」の経済学

「学力」の経済学

ご褒美で釣るのは良くないわけではないという話

  • テストでいい点を取ったらご褒美
  • 本を一冊読むたびにご褒美

という二つの条件で実験をしてみた結果、後者の方が効果が高かったとのことです。

「テストでいい点を取る」というのはアウトプットに該当し、これを達成するためにしなければならないことが具体的ではないです。一方、「本を読む」というのはやることが明確であるというのが良いそうです。

実際に知識量を増やすための読書であればテストで良い点を取るという結果に繋がりますし、行った努力(読書)に対して、結果(テストの点)に繋がれば子供が努力して結果を出すという楽しさを知りそうでこうかがばつぐんな感じしますね。

一方で、著者は最近の教育の、みんな平等やみんな揃ってゴールのようなものは批判しています。努力したが人がかならず報われるとか、残業している社員のほうが定時で帰る社員よりも頑張っていて優秀である、というのはまた違うんでしょうね。努力や頑張っている(または頑張っているアッピール)こと自体が目的になってしまうと、「良い結果を得るための努力」ではなく、「努力すること自体が目的」という手段の目的化になってしまうという話なのかなぁと思いました。

成果のトラッキング

ゆとり教育子ども手当てなど、社会の要請に応じて開始されたものの、まるで流行が廃れるかのように、いつの間にか終わってしまった教育政策は枚挙にいとまがありません。(中略)このように世代の子どもたち全員を対象にした政策は、子どもたちの成績、学歴、年収などに対して何らかの効果があったのかなかったのか、後にも先にもはっきりしないのです。

ゆとり教育とか子ども手当とか、センセーショナルなワイドショーとか匿名掲示板で叩かれたり、最終的にゆとり世代とかバラマキみたいなレッテルに使われるのよくありますね。こちら、実施側も批判側も良くなくてデータを用いて話していないというのがあるなぁと思いました。

こういうの、システム開発しててもよくあって適当な感じのマーケティング部門がウェーイな感じで要求出してきて、実際にその機能作った結果をトラッキングしなくてその機能が良かったのかどうかわからんとかよくあると思います。それでうまくいかない原因はすべて機能が足りないせいにしてくるヒャッハーマーケ部門はしねばいいのに!とかは昔よくありましたよ(ヽ'ω`)

政治ですらそういう状態になっているのは大変良くないですね。

少人数教育が良い、と言うのはバイアス化

一人の担任の先生が担当する生徒数が少ないほうが、児童にとって良いというのはまあなんとなく分かりますし、実際にデータとしても効果が高いということが現れているようです。

ただ、日本の場合少人数教育を実施している学校を"選んで"入学させる親の意識の高さと、それを可能にする親の収入という要因も加わってくるので純粋に少人数教育による学力の高さだけであるという判断はできないということが書いてありました。

海外で無作為に少人数教育をやった実験結果によると、費用対効果的にはそこまで高くないそうです。

教員の質の差の話

皆さん、本当に師と呼べるとても良い先生に巡り会えたこともあれば、ゲロ以下の匂いがプンプンするレベルの邪悪な教師にあったこともあるんじゃないかと思います。

教員の質を上げるためには高い専門性を持った人を採用するのが良いですが、教員免許というハードルが高いですね。こちらも海外のデータになりますが、「教員免許を持っている教師と教員免許を持っていない教師の差」よりも「教員免許を持っている教師内での格差」のほうが大きいそうです。

情報の信頼性

教育の効果のエビデンスの信頼性は以下の順になるのですが、

  • ランダム化比較試験
  • 非ランダム化比較試験
  • 分析疫学研究
  • 症例報告
  • 論説・専門家の意見や考え

日本だと最も信頼性の低い一番最後のもの、ましてや専門家ですらない人物のワイドショーでのコメントなどが影響あったりすることが問題視されていました。ランダム化っていうのはさっきの少人数教育の場合別の要因も絡んでくるので、そういうのが無いように完全にそれだけで判断できるようにしましょう、というような話ですね。

最近だとアニメ見てると犯罪が〜みたいなTVのコメンテータよくいますが、これなんてまったく信頼性ないですしむしろエビデンス的に言うと良影響のほうが強いのではないでしょうかね。(世界の中でも最もアニメが盛んと言える日本における性犯罪率の低さ)

まとめ

特に教育に関しては思い込みやテレビに出ていた誰かのよくわからない話が前提になって進んでしまうことがありがちなんですが、データを用いて説明してくれていてとても納得感あると思いました。

子育て中の人もそうじゃない人も読んで楽しめる本だと思います。 特に子供の教育に関わるお仕事をしている人には絶対に読んでもらいたい一冊ですね。